「家族関係がうまくいくようになれば、大学受験勉強に気持ちが向くようになると思います」とR君はいう。しかし、カウンセラーが「R君が何か働きかけることで、家族の問題が解決する可能性はありますか」とたずねると、「うーん」と考え込んでしまった。母親と祖父母の関係が、R君の現役受験での失敗によって悪化したとはいうものの、不仲はそれ以前からのことであり、かなり溝も深いようだった。R君がすぐに何とかできる問題ではなさそうである。しかも、入試は半年後に迫っている。今は家族関係を修復することよりも、R君がそれに巻き込まれずに、「どうすれば残りの半年間を勉強に集中できるか」ということを考えるのが先決だった。そのためには家族のトラブルから距離を置かなければならない。カウンセリングでは、まずそのことの検討から始まった。家族と距離を置く方法としては、すぐに帰宅せず、できる限り予備校に残って自習室で勉強をすること、休日は図書館などを利用し、外で勉強すること、家では母親の話を時間を決めて聞いて、それ以外の時間はなるべく自室にこもることなど、二人で綿密な対策を練った。一方で、R君の母親の様子が気になる。R君の母親があまりにも頻繁にクラス担任に電話をかけてきているからだ。「ところで、R君のお母さんが担任に頻繁に電話してきているみたいだけど、そのことは知ってる)」とカウンセラーはR君に聞いた。「はい、知ってます。母には大丈夫だからといっているんですが、僕にも頻繁に自分の心配をぶつけてきます。現役の時は、もう少し母にも余裕があったように思うんですが……」